ティピカ種は、ブルボン種と並び2大在来品種と呼ばれており、 エチオピアとイエメンに原種をもつ最も古くからある品種の一つです。「ブルマン」の愛称でも知られているブルーマウンテンなどの原種としても有名で、最近では高級品向けとしての栽培が増えています。
ティピカ種とコーヒー豆の商業的栽培の歴史
コーヒーの起源はアフリカ大陸のエチオピアですが、商業的栽培の始まりはイエメンが起源と言われています。
15世紀半ばからエチオピアとイエメンがアラビア半島のモカ(イエメンの都市)の東の山岳地帯からコーヒー豆の商業的栽培を始め、その後18世紀の初頭までエチオピアとイエメンがコーヒー栽培の独占をしていました。
17世紀初めの1616年にはオランダ東インド会社がモカからオランダのアムステルダムにコーヒーの輸送を始めたことをきっかけに、17世紀後半にはヨーロッパでコーヒーの需要が拡大し、イギリスのロンドンなどを中心に「コーヒーハウス」がつくられ、コーヒーを中心に市民の情報交換の場が広がりました。
時を同じくして、17世紀半ばの1658年にはオランダがコーヒー豆の独占状態であったモカからコーヒーの苗木を持ち出し、当時の植民地であったスリランカでコーヒー栽培を始め、その後ジャワ島にも苗木を持ち込み栽培が始まり各地での栽培が行われるようになりました。
このモカから持ち出されたコーヒーの苗木が、現在でも栽培されている優良品種ティピカのルーツとなったのです。
コーヒー栽培が世界中へ広まった歴史
1714年にはオランダの植物園で育成した苗をルイ14世に献呈され、オランダで育てられたティピカ種は、パリ植物園での栽培が始められ、その後の1723年にはパリ植物園の苗木がフランスの海軍士官ドゥ・クリューによってカリブ海のマルチニック島に移植され、1730年にはこのコーヒーがハイチを初めとするカリブ海や中南米一帯へと広がっていったのです。(※ブラジルは除く)
もう一つの歴史
オランダで育てられたティピカ種は、1720年頃に当時のオランダ領である南米のギアナへにも持ち込まれました。
その後、南アメリカに位置するカイエンヌやブラジル北部での栽培が始められ、1760~70年頃にはブラジル南部でも栽培が始められました。その後も南下してゆき、ペルーやパラグアイまで栽培が広められたのです。
ティピカ種のコーヒー豆の特徴
ティピカ種の特徴は、
- 豆のサイズが大粒で細長い舟形
- 透明感のあるフローラルな香りが特徴
- 柑橘系を感じさせる明るく煌びやかなの酸味と、際立った風味
- 全体的な味わいと風味の質が高い
上質な味わいと風味を持つティピカ種ですが、栽培を始めてから収穫できるまで4年ほどかかり、霧や病虫害に弱いのが難点です。コーヒー生産者にとってティピカ種は育てるのが難しいため生産性が低く、生産維持のためのコストもかかるため、現在では市場への流通量も極めて少なくなってしまいました。
生産者の中では1970年頃から他品種への移行が進み、生産効率も悪いため品種改良の対象にもなっています。
しかし近年では、ジャマイカのブルーマウンテンでも知られるティピカ種のもつ上質な味わいと風味を含んだ高級コーヒー市場への参入を睨み、再びティピカ種の栽培を始める農園も増えています。
まとめ
地球環境の変化などでコーヒーを栽培できる地域も刻々と変化しており、コーヒー生産者にとって生産性の低い品種のコーヒーを栽培することは大きな賭けでもあります。その生産者の努力と情熱を噛みしめながら、一杯をぜひ味わっていただきたいですね。
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