大手カフェチェーンでのバリスタを経験後、自家焙煎珈琲店「PORT OF COFFEE」を開業し、
小売店やオンラインストアでの自家焙煎コーヒー豆の販売や、イベントでハンドドリップコーヒーのご提供をさせていただいております。
今回から、企画記事として「PORT OF COFFEE」の営業で、ハンドドリップコーヒーを提供する際、
コーヒーの抽出について考えていることを少しずつお話できたらと思います。
コーヒーの淹れ方などでお悩みの方にとって、お悩み解決や参考になったら嬉しいです!
ということで今回は、「ハンドドリップコーヒーを淹れる際の”お湯の温度”の決め方」をPORT OF COFFEE流に解説していきたいと思います!
それではよろしくお願いいたします!!
お湯は何℃がいいの?
コーヒーを淹れる際のお湯の温度について、いろんな意見があると思います。
正直な話、コーヒー関連の本を読んでみたり、いろんな人の意見を聞いてみたりしても、人によって全然違いますよね??
PORT OF COFFEE流の考え方は、もっと根本にあったりします。
それは、
「コーヒーのどんな側面を味わいたいのか?」です。
結局、何℃が良いのか?というと。
それは、どんな味のコーヒーを飲みたいのか?というゴールがあるからこそ決まるものです。
一旦、何℃が良いのかという話の前に、「そもそも、なぜお湯で抽出するのか?」というところから話していきますね!
抽出効率と細胞壁の関係
抽出効率
「抽出効率」という言葉は、コーヒーの味の成分が出やすいか出やすくないか?の効率を言います。
なぜお湯で抽出するのか?というと、「お湯の方が効率が良いから」です。
なぜお湯の方が効率が良いのか?というと、「お湯の持つ熱エネルギーが成分を引き出しやすいから」です。
お湯の温度が高ければコーヒー豆の様々な成分が引き出され、逆に低ければ引き出される成分は限定されてきます。
俗に言う「過抽出」や「未抽出」と言ったものです。
コーヒーの成分は「酸味 → 苦み」の順に抽出されるため、抽出効率が悪ければ酸味だけが引き出され、
抽出効率が良過ぎれば苦みが強く引き出されます。(苦みが出るかは焙煎度にもよります。)
細胞壁の壊れ具合
そして、コーヒー豆の細胞壁の壊れ具合も抽出効率に影響します。
細胞壁が壊れていれば成分はお湯に溶けやすくなります。
「細胞壁の壊れ具合」を簡単に知る方法の一つとしては、「焙煎度が浅いか深いか?」です。
コーヒー豆は焙煎によって味を引き出されますが、同時に焙煎すればするほど細胞壁は破壊されていきます。
手挽きのコーヒーミルでコーヒー豆を挽く機会がある方なら、浅煎りと深煎りのコーヒー豆を挽いてみると、
浅煎りのコーヒー豆は硬くて挽きにくく、深煎りのコーヒー豆はサクサクと挽きやすい印象を感じると思います。
すなわち、浅煎りのコーヒー豆よりも深煎りのコーヒー豆の方が細胞壁の壊れ具合が激しく、成分が出やすいということになります。
温度帯による人間の味覚
「コーヒーの温度によって味は変化します。」という言葉を聞いたことがあります。
しかし、実際は「人間の味覚の感じ方が温度帯によって変化する」ということが知られています。
コーヒーの温度が高いほど人間の味覚は苦みを感じやすく、温度が低いほど酸味を感じやすくなります。
そう考えると、苦みを感じたいのであれば温度が高いほうが良いですし、酸味を感じたいのであれば温度は低いほうが良いということになります。
ハンドドリップコーヒーは複雑さも楽しめる飲み物
抽出効率や細胞壁の関係、人間の味覚の感じ方についてお話しましたが、もう一つお話があります。
それは、「ハンドドリップコーヒーは複雑さも楽しめる飲み物である。」ということです。
エスプレッソのように抽出時間が短いものと違い、ハンドドリップコーヒーは抽出時間が長いです。
その分、引き出される成分も時間とともに加わってきます。
敢えて抽出効率を悪くさせてクリアな味わいにする方法もありますが、そのような深~い話は後ほどということで。
その複雑さの折り合いをつけてバランスを取るのがバリスタの腕の見せ所といったところです。
そして、その淹れ手の個性ともいえる「複雑さ(クリアさも同様)」を楽しむのも、ハンドドリップコーヒーの楽しみ方です。
湯温の他に
・分量
・挽き具合
・抽出時間
・時間ごとに注ぐ割合や注湯回数
・ドリッパーの形状
・ペーパーフィルターの種類
そのような様々な変数がある中の一つが「湯温:お湯の温度」ということなので、
正直な話、一概には「何℃」とは言えないからこそ、様々な意見が飛び交っているのが現実という訳です。
PORT OF COFFEEが目安とするもの
PORT OF COFFEEが目安とするものは、コーヒー豆のコンディションです。
具体的には、
・焙煎度
・焙煎からの日数
・豆の特徴
その他に
・使用する水の特徴
ざっくりと、このようなコンディションを見てから決めていきます。
そして実際に味を見て、満足できる仕上がりになるよう壁打ちしていくような感じです。
例えば、深煎りのコーヒー豆で苦みは強く出したくないけれど、深みを出したいのであれば、
湯温は低めにして、使用するドリッパーはお湯抜けが比較的ゆっくりなものを選んだり。
逆に浅煎りのコーヒーで成分を存分に引き出しながらもクリアにしたいのであれば、
湯温は高めにして、使用するドリッパーはお湯抜けの良いものを選んだりします。
ざっくりと、湯温だけを言うのであれば
・浅煎りは90~93℃
・深煎りは85~88℃
といったところで、細かいところは挽き目と抽出時間で調整しています。
はじめの一歩として
ということで、今回はハンドドリップコーヒーでの湯温についてお話をさせていただきました。
湯温の他に、コーヒーを抽出する際には沢山の変数があるので、今後とも一つ一つしっかりとお話をしていきたいと思います。
参考になったら嬉しいです。
ドリップバッグなどで、簡単に湯温による味の違いを飲み比べてみるのも良いかと思います。
ぜひ、コーヒーについてより深く楽しんでいただけたら嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
それではまた!
まさてぃー ハンドドリップでコーヒーを淹れるときに、コーヒー豆の挽き具合やお湯の温度を気にしていますか? コーヒーを粉で購入する方でも、知っておくと便利な基礎知識を今回はお話したいと思います。 コーヒーの淹れ方[…]